熱帯魚飼育を始めるにあたって、いろいろと知らないといけない知識は意外と多いです。そして雑誌などを見ると『ここら辺の用語は知ってるよね?』みたいな感じで知っていること前提で書かれたりしてます。
なのでこの記事ではそういった前提を一切なくし、【ろ過】についてだったり【PH】についてだったり、熱帯魚を飼育するにあたって最低限必要な知識を解説していきます。
【1番大事】ろ過の仕組みを知ろう
熱帯魚飼育で一番必要な知識かもしれません。 そして一番大切にもかかわらず【理解するのめんどくさそう】ということでないがしろにされがちな分野になります。ただここを理解せずに熱帯魚飼育を始めようとすると大きく失敗することになるので、必ず押さえておきたい分野です。
当然ですが、熱帯魚はフンもしますしおしっこもします。また、餌の残りなども発生するでしょう。そうするとどうなるかというと、そこから毒性が強いアンモニアが発生します。
ざっくりですが、アンモニアを亜硝酸塩⇒硝酸塩と比較的毒性の弱い物質に分解するために必要なのがろ過という訳です。
そのろ過のシステムを水槽内に作り出すために、熱帯魚(というか観賞魚全般)飼育では【物理ろ過】【生物ろ過】【化学ろ過】を用います。これらのろ過システムを機能させるためにろ過器(フィルター)に様々なろ過材を入れる必要があります。
そして当然っちゃ当然ですが、このろ過材を入れられるろ過槽の容積が大きければ大きいほど、ろ過力は大きくなります。なのでフィルターを選ぶときは、このろ過槽の大きさに注目して選ぶといいです。
だいたいの流れは掴めたでしょうか?では以下で【物理ろ過】【生物ろ過】【化学ろ過】について詳しく説明していきます。
物理ろ過とは?
魚のフンや、食べ残しなどを物理的にこしとるものがこの物理ろ過です。上部フィルターに入れるマットを想像してもらえば分かりやすいと思います。
後に説明する生物ろ過がより効率的におこなわれるように必要なろ過です。これが無いと、例えば肉食魚や金魚などフンを多くする種類を飼育する際にフィルターが目詰まりを起こし、アンモニア⇒亜硝酸塩⇒硝酸塩というろ過の流れをつくりだすろ過のシステムが上手く働かない可能性があります。
こんな感じのマットを使用しますものです↓
このマットを入れることで、フィルターの掃除をするときに、基本的にはこのマットを洗うだけで目詰まりが解消するので、ろ過槽には必須のアイテムです。
カットもできるので、好きな大きさに切ればどのフィルターにも使用できます。 ただフィルターによっては、こういったマットを入れられるスペースが無いものもあります。そういった場合は、水の吸い込み口に装着するスポンジが販売されているので、そちらを装着すればオッケーです。
こんな感じ↓
自分が使用しているフィルターのサイズに合わせて購入するといいです。
ただ、物理ろ過用のマットを入れるスペースがないような小さいフィルターでも飼育できる種類=そこまで水を汚さない種類を飼育している、という場合であれば必須ではないです。
生物ろ過とは?
これが熱帯魚飼育のメインとなるろ過になるかと思います。上記の物理ろ過も、この【生物ろ過】をより効率よく働かせるためにあるろ過と言えます。
この生物ろ過によって、有害なアンモニアを亜硝酸⇒硝酸塩と分解させることができます。これらの分解は、ろ過バクテリアというバクテリアによって行われます。
基本的に飼育していたら勝手に繁殖していきますが、立ち上げ当初はやはりろ過バクテリアは少ないので最初は飼育匹数を抑えたり、※パイロットフィッシュをいれたり、バクテリア剤を入れたりして対応します。
また、そのバクテリアの種類なのですが、以下の2種類です(熱帯魚飼育でバクテリアと言われたら一般的にはこの2種類のことを指します)。
ニトロソモナス属(アンモニア硝化菌)
毒性の強いアンモニアを分解して、アンモニアよりも毒性の弱い亜硝酸塩に分解するバクテリアです。 一般的なバクテリア剤にはだいたいこちらが入っています。
ニトロバクター属(亜硝酸硝化菌)
亜硝酸塩もまだまだ毒性が強いので、それを比較的無害な硝酸塩に分解してくれるバクテリアです。取り扱いが難しいため、一般的なバクテリア剤にはあまり見られない種類です。ただこのバクテリアを封入してある数少ないバクテリア剤もあります。それがバイオニトリベックです。なんとアンモニア硝化菌、亜硝酸硝化菌の2種類が封入されているのです。そして、たった24時間で飼育可能な環境にしてくれる優れものです。
まあ個人的には、『単純に最初は飼育匹数を抑えればよくね?』と思いますが、すぐに理想の飼育環境を整えたいのであればおすすめです。
※パイロットフィッシュ⇒基本的に肉食魚飼育に用いられます。メインの魚を導入する前に、水量に合わせて数匹から十数匹の丈夫な熱帯魚を水槽に入れておきます。2週間くらいするとバクテリアが繁殖してくるので、そのタイミングでメインの魚を導入します。その際パイロットフィッシュとして入れていた魚はそのまま餌になります。
【絶対禁止】生物ろ過における注意点
よくありがちなのが、『ろ過槽のろ材が汚れたから全部水道水できれいに洗っちゃおう!』という事象です。とくに初心者の方にありがちです。
これするとせっかくろ過槽内に繁殖したバクテリアが全部いなくなるので絶対にしちゃいけません。
何をしても水槽が濁ってしまってどうしようもない時、水をすべて取り換えて、ろ材も含めてまるまる洗う時もありますが、基本【ろ材は洗わない】と覚えておきましょう。
また、雑誌などでろ過マットを洗う時も飼育水で軽くゆすぐ程度にしましょうという記述を見かけますが、個人的にはろ過マット=物理ろ過で割り切って、水道水でがっつり洗ってもいいのではないかと思います。実際にショップで働いていた時なんかは、洗いもせず汚れたら新しいマットに交換していました。
あくまでマットの役割は【フィルターの目詰まりを防いで生物ろ過を適切に行わせる】というところにあります。
なのでマットにも生物ろ過の役割を求めて、本来の物理ろ過の効果を半減させてしまうようでは本末転倒なのです。であれば思い切ってマットは物理ろ過!と割り切ってもいいのではないかと思います。
化学ろ過(吸着ろ過)とは?
活性炭や、ゼオライトなどを利用して、流木からでた黄ばみやを吸着したり、においを抑えたりと、水槽立ち上げ当初の生物ろ過ではろ過しきれない汚れを吸着してくれるろ過になります。
アンモニア、亜硝酸などの物質も直接吸着してくれるので、吸着ろ過とも呼ばれます。水槽立ち上げ当初はかなり活躍してくれます。
これだけ聞くと、『めっちゃいいじゃん!別に生物ろ過なんてめんどくさい過程を踏まなくてもこれだけでいいじゃん!』と思う人もいるかも知れませんが、世の中そんなに甘くありません。
これらのろ材は寿命が短く、だいたい2週間~めっちゃ長くても2ヶ月くらいです。なので頻繁に変える必要があります。ただ逆に言えば頻繁に変えるコストを気にしないのであれば、生物ろ過をそこまで意識しなくてもいいかもしれません。
PH(ピーエイチ)ってなに?
そのまま”ピーエイチ”か”ペーハー”と読みます。こちらを測定して、7が中性、それより値が低くなると酸性、高くなるとアルカリ性となります。まあしっかりと義務教育を受けた15歳以上の方は問題なく理解できると思います(笑)。
基本的には6.5~7付近の、弱酸性~中性を好む魚が多いです。飼育していくと徐々に酸性に向かっていくので、それを防ぐためにの水換えが必要になります。また、アフリカンシクリッドなど、アルカリ性を好む種類は、底床にサンゴを使います。
最初は、PHに特に敏感ではない種類を飼育した方がいいかと思います。まあいわゆる初心者向きと言われる種類の熱帯魚はだいたい弱酸性~中性を好む魚が多いので、初心者向きの魚から飼育魚を選ぶときはそこまで気にしなくてもいいかもしれません。
どれくらいの匹数を入れられるの?
決まった数というのは特にはありませんし、使用しているフィルターのろ過力にもよりますが、基本的にはネオンテトラなどの小型魚で1Lに1匹という目安です。ただ初心者の方の場合はその数が少ない方が水質が安定するので、最初は2Lに1匹の目安で始めた方がいいかなと思います。
また逆に飼育に慣れてきて飼育技術が向上してきたら1Lに2匹の目安で飼育しても大丈夫かと思います。
あくまで飼育している魚の状態を見つつ決めましょう。
人工飼料と生餌ってどっちを与えればいいの?
人工飼料に関してはイメージが湧きやすい思います。普通にパックに入れられて棚に並んでいるようなものです。
生餌に関しては【冷凍餌】【生きている餌】に分けられます。
冷凍餌としては、冷凍赤虫や、冷凍エビ、冷凍ブラインシュリンプなどが売られています。
生きている餌としては、小赤(小さい和金)、メダカ、エビ、どじょう・・・など様々です。コオロギとかミールワームなども売られています。
これらの人工飼料と生餌に関してですが、別にどっちが優れているとかは特にないです。人工飼料は栄養バランスに優れ管理も楽ですが生餌と比べると嗜好性が劣ります。逆に生餌は嗜好性は高く栄養価も高いですが、様々な餌を与えないと栄養バランスが崩れますし、手間的にもお金的にもコストがかかります。あと生きている餌を与える場合は病気の持ち込みなどにも注意しないといけません。
このように、両方ともメリットデメリットがあるので、できれば与えるのが理想的ですが、肉食魚でどうしても生餌しか食べない場合以外であれば、頑張って人工飼料も食べる状態にしてあげた方がいいです。
やはり人工飼料の方が栄養バランスに優れますし、なにより長期的に飼育するとなった時に、【手間とお金がかからない】というのは結構大切になってきます。
なので結論、両方与えるのが理想ですが、どちらか片方だけ、と言われたら人工飼料を与えた方がいいかと思います。
砂利は敷いた方がいいの?
これは賃貸がいいのか?持ち家がいいのか?と同じような問題で、正解が無い問になります。好みの問題なわけです。なので以下に砂利を敷くことのメリットデメリットを書くので、それを参考に敷くのか敷かないのか自分で決めてください。
◆砂利を敷くメリット
・見た目がキレイ
・ろ過バクテリアが繁殖しやすい(まあそんな気にしなくていいよ)
・ゴミが舞いづらい
・魚の体色がよりはっきりする
◆砂利を敷くデメリット
・砂利の中の掃除も定期的にしないといけないのでめんどくさい⇒さぼると有毒物質が発生して病気の原因になる
砂利を敷かなければホースでフンを吸い出すだけなので簡単なのですが、砂利の中の掃除は意外と大変です。やってみると分かると思いますが、大変というかめんどくさいんですよね。
なのでここらへんをどう考えるかですが、個人的には【砂利は敷いた方がいい】と思っています。
だって観賞用に熱帯魚を飼育している訳なので、見た目は綺麗な方がいいじゃないですか。砂利を敷いた方が熱帯魚も水槽内もきれいに見えるので、僕は砂利を敷く方をおすすめします。
まとめ
これで最低限熱帯魚飼育に必要な知識は手に入れることができたかなと思います。あとは、具体的に何を用意すればいいのかを確認しときましょう。
これは個人の感覚にもよりますが、僕は『え?それだけで飼育できるんだ』と思った記憶があります。正しい知識さえあれば熱帯魚飼育はそこまでハードルは高くないです。そして学生でも少し頑張れば用意できるようなお金で熱帯魚の飼育は始められます。
詳しくは【初心者向け】熱帯魚水槽の立ち上げに必要なものは?費用はどれくらい? で書いたのでよかったらご覧ください。